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高い医療費に困ったら ~高額療養費①~

このホームページでは高額療養費について、前半は漫画で説明しています。

詳細な説明は後半にありますので、こちらからどうぞ。

 

 

旦那コラム

高額療養費

 

手術が必要になった時や、高額な薬剤を服用する必要がある時など、医療費が高くなることがあります。そんな時に知っておくべき制度の一つに高額療養費があります。

なお、この記事は2020年5月現在の情報です。

高額療養費ってどんな制度?

高額療養費とは、高額な医療費を支払った際、一定の金額(限度額と言います)を超えた分が還付されるというものです。

 

高額療養費の限度額

70歳未満の自己負担限度額

※1

【国保】 世帯主および被保険者全員が非課税の場合

【社保】 被保険者本人が非課税の場合

※2 総医療費は保険適用される診療費の総額(10割)

 

70歳以上の自己負担限度額

※3 自己負担割合が2割の場合は、所得があっても「一般」となります。なお、同一世帯に課税標準額145万円以上の人がいない場合や、収入が一定未満(単身:383万円、2人以上:520万円)の場合、申請により「一般」の区分となります。

※4

【国保・後期】世帯主および被保険者全員が住民税非課税の場合

【社保】被保険者本人が住民税非課税の場合

※5

【国保・後期】世帯主および被保険者全員の所得が基礎控除後にゼロとなる場合

【社保】被保険者本人と扶養家族の所得が基礎控除後にゼロとなる場合

 

共通の情報

1年間に4回以上限度額に達した場合、「多数回該当」と呼ばれ、限度額が下がる制度があります。詳しくはこちらで説明します(別タブで開きます)。

各区分の限度額は、概ね月収(所得ではなく収入)の25%となるように設定されているようです。

 

高額療養費の計算単位

高額療養費の限度額は、同じ月に、同じ医療機関で受けた診療毎に限度額に達しているか計算をします。

複数月を足して限度額に達していても、単月で達していなければ高額療養費の対象とはなりません

同じ月というのはカレンダー上で同じ月なので、月を跨げば合算出来ません。

1月1日と1月31日に同一の医療機関を受診した

1月31日と2月1日に同一の医療機関を受診した

 

複数医療機関を受診したり、同一世帯の複数人で受診した場合は、単純に支払った額を足して限度額に達していれば対象となる、というものではありません。その場合は、計算が複雑になりますので、個別の医療機関で限度額に達していなければ、対象とならない場合があります。これについては、こちらで紹介しています(別タブで開きます)

なお、同じ医療機関にかかっていても、外来や入院、歯科は個別に限度額に達しているか計算されます。

ただし、院外処方で別の薬局で薬を受け取った場合は、処方箋を発行した医療機関と調剤費を足すことが出来ます。これは、以前は院内処方をしていて合算することが出来たのが、医薬分業を進めるときに、院外処方に移行した際、不利益とならないようにするためです。

 

高額療養費の対象医療費

保険適用となっているもののみ対象です。以下のものは対象外です。

対象外(例)

・入院時食事療養費(別に限度額が定められています)

・差額ベッド代(個室料)

・選定療養費(紹介状なしの大病院の初診料等)

・予防接種や人間ドッグ、様々な健診・検診

・自然分娩(出産育児一時金の対象。帝王切開は対象。

・先進医療や民間療法など保険適用されていないもの

 

高額療養費の所得区分の判定

加入中の保険によって、高額療養費の所得区分(限度額)を計算する時の所得に違いがあります。

国民健康保険

期間は、前年の1月から12月の所得によって所得区分を判定します。

一度判定された所得区分は、所得申告や世帯の人数等に変化がなければ、8月から翌年7月まで続きます。ちょっとややこしいですね。

国民健康保険(例)

2020年1月~12月の所得 → 2021年8月~2022年7月の所得区分
2021年1月~12月の所得 → 2022年8月~2022年7月の所得区分

なぜこのようになっているかというと、市区町村があなたの所得を把握するのは、翌年以降になるからです。

2020年の場合は、2020年1~12月の所得を確定申告等するのが概ね2021年の3月頃で、その後企業等から従業員の所得を申告されて、全住民の所得が確定するのが概ね6~7月になります。なお、これは住民税の計算と同時に行われます。

その後、各人の所得区分の判定、限度額認定証の発行手続きが行われるため、8月からの適用となります。

この際に所得の判定に用いられるのは、国民健康保険では旧ただし書き所得が用いられます。収入とは違い、必要経費等を控除した後の金額です。

70歳未満

同一世帯の、国民健康保険加入者全員の所得が合算されます。

70歳から74歳

同一世帯の、70歳以上の国民健康保険加入者の所得が合算されます。

ただし、同一世帯に課税標準額145万円以上の人がいない場合や、収入が一定未満(単身:383万円、2人以上:520万円)の場合、申請により「一般」の区分となります。

収入の基準があるのは、たまたま必要経費等として控除されるものが少ない所得を得ている人で、所得は高く算定されてしまうけれど、その割には収入が少ないという場合を救済するためです。(極まれのケースです。)

社会保険

被保険者本人の標準報酬月額により計算されます。国保とは違い、他の世帯員の所得は計算に含まれません

同一年の4月~6月の報酬の平均額を標準報酬月額の区分に当てはめて計算されます。限度額認定証の有効期間は同一年の8月から翌年7月までです。

社会保険(例)

2020年4月~6月の標準報酬月額 → 2020年8月~2021年7月の所得区分
2022年4月~6月の標準報酬月額 → 2021年8月~2022年7月の所得区分

これは企業が被保険者の所得を把握しているから出来ることです。なおこの際、給与以外に所得があっても考慮に入れられません

※4~6月とそれ以外の期間で、報酬に著しい差がある場合は、随時改定の届出を行えば、年間平均の保険者算定が行える場合があります。

後期高齢者医療保険

同一世帯の後期高齢者医療保険加入者全員の所得が合計されます。

ただし、全員の課税所得が145万円未満の場合は一般以下となる他、世帯の人数や収入によって複雑に所得区分が変わります

一律簡単な判定ではなくなっていますが、個々の家庭の状況に応じて、様々な条件を設定して、少しでも限度額を下げようとしているように感じます。色々な要望に対応しようとするため、制度としては異常に複雑になっています。

なお、所得の判定機関は国民健康保険と同じで、前年の1月から12月の所得によって所得区分を判定します。

一度判定された所得区分は、所得申告や世帯の人数等に変化がなければ、8月から翌年7月まで続きます。

後期高齢者医療保険(例)

2020年1月~12月の所得 → 2021年8月~2022年7月の所得区分
2021年1月~12月の所得 → 2022年8月~2022年7月の所得区分

 

高額療養費の申請方法

加入中の保険者によって違います。以下は申請方法の一例です。

国民健康保険

市区町村の役所の窓口で申請する必要があります。

その時の提出書類は概ね以下のようなものですが、他に必要なものがあるかどうかは事前に自治体に問い合わせた方が無難です。

【主な必要書類】

①高額療養費の申請書、②医療機関に支払った領収書、③身分証明書、④印鑑、⑤通帳 等です。

多くの自治体で申請が必須となっています。国民健康保険法で高額療養費は申請主義となっていることと、申請してもらわないとあなたの振込先口座が分からないからです。(マイナンバーは口座と結びついていますが、国保の職員はマイナンバーから口座情報を得る権限がありません。)

①の申請書は多くの場合は、役所の窓口で取得できます。ホームページに掲載している自治体もあります。

社会保険

協会けんぽ

高額療養費の申請書を記入して、各都道府県の協会けんぽに送付します。

申請書は協会けんぽのサイト(こちらから)からダウンロードできます。

非課税を証明するためには、マイナンバーの情報連携をするか、市区町村で非課税証明書を取得する必要があります。

健保組合

医療機関にかかった数カ月後に、給与と同じ口座に振り込まれることが多いようです。申請が不要な場合もありますので、会社の人事担当の方に確認をされるとよいでしょう。

会社はあなたの口座を知っているので、このような事が可能なのです。

なお、加入している保険者によっては、高額療養費に加えて付加給付が支払われる場合があります。付加給付は高額療養費の上限に満たない部分の医療費に対しても、給付されるものです。それにより例えば一律2万円を超えた分は、全額返還されるといった会社もあります。

後期高齢者医療保険

初めて給付の対象となった時に申請書が送られてきますので、居住している市区町村に郵送で申請します。

2回目以降は該当となる度に申請をしなくても自動で振り込みされます。振込先は初回の申請書に記入した口座です。

高齢になると、毎回申請することが難しくなることが予想されるためこのような制度設計がされています。ちなみに国保でも市区町村によっては、一部70歳以上のみの世帯については申請を不要としているケースもまれにあります。

 

高額療養費の給付時期

加入中の保険者によりますが、医療機関を受診してから、おおよそ2~4カ月程度かかります。その理由は、医療費の審査にある程度時間がかかるからです。

医療費の請求・審査の仕組み

まず医療費の審査の仕組みを簡単に説明すると、医療機関は、1か月間にその医療機関で発生した医療費の請求書のようなもの(レセプトと言います)を纏めて、審査機関に送ります。

審査機関は保険者が委託している医療費審査のプロ集団です。国保や後期の場合は国保連合会、社保の場合は支払基金というところがあります。この審査を通過したものだけが、正式に医療費として認められるのです。

審査機関は、医療機関から送られてきた請求書(レセプト)を1カ月毎に審査し、審査を通過したものを保険者へ送ります。保険者はその請求に基づいて医療機関に医療費を支払うのです。(支払う時も支払機関を通して支払います。なお、審査機関と支払機関は同一の組織が担っています。)

支払まで流れ

ここまでの過程を経て、医療費が確定します。この時点で2カ月くらいは経っていますよね。保険者としても、医療費が確定していなければ、高額療養費をいくら支払っていいか分かりませんから、支払処理ができません。

医療費が確定したら、高額療養費の申請を受理して、支払いの事務に1カ月ぐらいかかるので、合計すれば概ね2~4カ月程度の時間がかかるのです。

患者が医療機関で支払った領収書を提出すれば、医療費がすぐに分かるじゃないかという人がいるかもしれませんが、審査をしなければその医療費が正しいという証拠がありません。医療機関が診療報酬の計算を間違えている場合もまれにあるからです。

なお、医療機関の請求に疑義がある場合等は、審査をすぐに通過しないということもありますから、場合によっては半年以上かかることもあります。

 

高額療養費の時効

高額療養費の申請の時効は、診療を受けた日の属する月の翌月1日から2年です。

なぜ診療日からではなく翌月1日からかというと、高額療養費は一カ月に支払った医療費が高い場合に支給されるものですので、その月が終わらないと給付を受けられるかどうかが分かりません。そのため民法でいうところの権利が発生する日は、翌月の1日となるからです。

 

限度額認定証

高額療養費の一つ大変なこととして、自己負担割合(1~3割)に合わせた金額を、一旦支払わなければならないという点が挙げられます。

後で還付されるとはいえ、高額になると一旦立て替えるのも困難な場合があります。

そんな時は限度額認定証を取得するとよいでしょう。詳細についてはこちらで紹介します。

 

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